病院の匂いが僕は好きだった


牛乳瓶の犠の花数本
澱んで落ちる鈍い明りは
なべての画鋲の穴に溜れ
革の靴音は永遠の木霊

   * *

病院の敷布はいつでも洗いたて
面会謝絶の貼り紙に
看護婦さんまで白光り

   * *

枯れかけた肩をふるわせて
禁酒を命ぜられたあなたが
こっそりと禁を破るのを
みんな知っている
知っていて許している

   * *

あなたはみんなに尋ねています
天井が怖くないかと

天井を恐れるあなたを
みんなは恐れる
天井を恐れるあなたの
真実に触れまいとして

   * *

哲学的に眠るあなたの寝顔は
諦めと執着の二律背反です
苦痛は苦悩でないから
こらえることしかありません
あるいは待つこと?

   * *

病院の敷布はいつでも洗いたて
個室ともなれば
患者さんまで白光り

   * *

牛乳瓶の犠の花数本
首肯いて萎えて






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