1979年7月7日


1979年7月7日
牽牛でない私が
織女でない弟に会いに
大阪から東京そして東北の小さな駅へ
そこからバスで1時間公民館前で降りる
公民館とは名ばかりの普通の民家のようなもので
山々や田の緑が目を刺して
ひからびたみみずに群がる蟻らを断じて踏んづけて行く
図々しい西瓜が所狭しところがっていて
必死にぶら下がる紫の匂える茄子の実よ
松林を根元からわさわさ揺らして片腹痛しと風がとおる
つくづく惜しいと泣く蝉よ一体何がそれほど惜しいのか
つぶやいてるうちにS少年院に着く


麦藁帽子をかぶっていた弟は
意外と元気そうで
そういえば母や姉も変に落ち着いて見えたことに思い当り
自分だけがぽっかり浮かんでいる
そんなことってよくあったなと思い返していると
よく来たねと弟が坊主頭に手をやる
大人になったなと私は感じ
何をしとるんや いつまでも子どもやないぞといってみる


そうこうして
思い出にもならないありふれた話のうちに時間となって
若い教官がやってきて
席を立った弟を押し出すように連れて行き
その時その時その時その時
突然こみあげて来るものがあった
やっぱりなと思った


帰りの道すがら
重そうな荷を背負った老婆に出会った
持ちましょうかというと
彼女は少し警戒するように立ち止まり
ええよお と大声でこたえた
白髪の禿げかけたこの老婆にどうか幸あれ
私は心から祈った






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