長生きしたっていいことないよねお祖母ちゃん
暗いことを恐れて
あなたは電球を点けたまま眠りました
何十年も
耳が遠いと長生きするわ
いらんこと耳貸さんですむからや と
テレビで漫才師が大声でいっていました
たしかにあなたの耳は遠くなりましたが
僕もあなたの人生について
何にも聞いたことがない
誕生日さえなかったようだったし
それでも不思議なことに年は取っていくみたいで
娘や息子が次々に先立つたびに
あなたはもっと早く年が取れないものかと嘆く
子供の頃、あなたの帰りが遅いと、皆が心配していた時、僕は、冗談で、
死んじゃったんじゃないかといって、皆のヒンシュクを高く買ったことが
ありました。いっていいことと悪いことがあるのだと。そんなことはわかっているのに。
○○さんが呼んでいる と
突然あなたはいいだすようになり惚ける
娘や息子はあなたの手によって殺されたことになった
長生きしたっていいことないよねお祖母ちゃん
小さくなって、馬鹿になって、動けなくなって、固くなっていくだけだしかも
死ねないのではないかという不安
最後の病気の三年余りを
たった一つの救済として
仏様になれ
(1985.3.31祖母死亡)
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