<セルフヘルプ・グループ(自助グループ)>

「セルフヘルプ・グループの役割と活動の実際について」 の研修会資料より

☆ 中田知恵海 武庫川女子大学 助教授 


セルフヘルプ・グループとは

セルフヘルプの意味には個人による自助・独立(あなたは自分でできる)−自立
相互援助(でも、あなたは一人ではできない)−共同

T 自助・相互支援機能
 生き辛さや生き難さを抱えて自分自身を否定し、孤立し、絶望している人たちが同じ状況にある人たちと相互に支援しあって、その状況をまるごと受け入れる、あるいはその生き辛さを軽減、改善することを目的とする、全ての活動の基本となる機能である。

T−@ 親睦機能
 当事者同士の親睦活動を通して、楽しい経験をする。そこでは心の交流があり、人間関係が形成される。厳しく社会生活を制限されがちな当事者にとっては、そのこと自体が生きがいの一つともなり、社会参加へのステップとなる。
 生き辛さの状況にとらわれている当事者に、違った生活体験の機会となって自分の問題や課題に距離を置いてみることを学習する機会を与える。
 他の同じ状況にある人とふれあい、生き方や心のあり方を知り、学ぶ機会となる。

T−A 「わかちあい」の機能
@仲間を見つけられる
Aメンバー同士が交流を深め、励ましあって、互いに日常的な悩みや精神的苦しみなどを共有することによって、当事者の抱える問題の緩和や軽減が図られる同じ生き辛さを抱える人同士が、対等な関係の中で体験を語り、情報を交換しあい、感情を表現する。そうした出会いを通して、ありのままの自分が仲間に受け入れられ、仲間はそこにいるだけで丸ごと分かり合える。
B社会の偏見や差別に苦しむ人にとっては、社会からの一時的な避難所となる。あるいはオアシスとなって、次の活動のエネルギー源となる。
Cメンバーの体験に基づいた知恵や工夫を獲得し、交換しあって、自らの問題の対処方法を習得する。
D自分をより正しく把握し、自己の判断の材料にすると共に、今後の見通しが立てられる。
  例:癌にかかっていることを自分はどのように捉えているか。癌を受け入れるとはどういうことか。こうした点について次のように情動的に把握できる。
  「癌から回復することをあきらめるわけではなく、回復可能でしかも他の誰でもない自分自身が向き合わなければならない病気である。癌と共に生きることを情動的に身も心も感じ取ること」

何を共有するか
 情報:体験に裏付けられた情報をさす。例えば、病気や障害を持つ子どもの親の会では医療の情報に加えてそうした病気や障害を持ちながら、生きている他者の生活が伝えられる。医師に口唇口蓋裂の修正手術を勧められたが、他の会員から子ども本人は修正手術を望んでいるのか?修正手術をすれば、どの程度きれいになるか、医師に確認したのか?それが本人や親の期待に添うものであるか?「主治医はこの手術を勧めるけれど、どうしよう?」といった具体的な迷いにも先輩の会員の体験談から、多くの情報を得る。
 感情:絶望したり、自分自身ではどうしようもできない、と思う気持ちを共有することによって安心を得る、孤立から解放される、自信や自尊心を回復する、自分の居場所を得ることに繋がる。
文化:セルフヘルプ・グループの中では固有の文化が共通基盤として築かれていく。
   吃音の人が吃音が治ったら社会に出て就職しよう、恋をしようと思うのではなく、吃音を抱えたまま、このまま生きていこうと考える。内なる自分の変革である。しかし、自分自身ではそこまで、解放されていても社会がこれを受け入れないで、吃音の人を社会の隅に追い遣る文化であれば、吃音の人が自分らしく社会で生きていくことを社会が遮ってしまう。そこで、次にセルフヘルプ・グループの固有の文化を社会に発進し、「社会の価値観を広める」。
   “Black is beautiful”「障害は個性」「ちがうことこそ、エエコッチャ」

T−B 「ときはなち」の機能
 わかちあいが進展すると、セルフヘルプ・グループのメンバーが抱えていた「自己否定」や「とらわれ」から解放されてありのままの自分を積極的に受け入れられるようになる。「ときはなち」の手だて
* ヘルパーセラピー原則
 ピア・カウンセリングや当事者の相談活動のように、自らの問題克服や失敗の体験をベースに同じ問題を持つ者の立場から、相談援助活動を展開し、その問題の軽減に役立つだけでなく、自らも被援助者の立場から、援助を与える立場になることにより、自らの問題に対処する能力を一層、高める活動を指す。

ヘルパーセラピー原則による「ときはなち」のプロセス
E問題の客観化:新しい指針や自己の問題の捉え直し
Fアイデンティティの回復あるいは生活課題を持つ者の新たな固有のアイデンティティの発見と確率の場
G他者を癒すことと同時に自分も癒される
H自己の有用性に気づく・自尊心の回復・人間としての尊厳性を自覚
I援助者は効果的に他者を援助できるように学習するから、結果的に実際にその能力が高まる。
Jこれらの結果、自己への信頼性を高め、主体性を育てることなどによって、酒害などの依存的状況からのときはなちが可能となる。
K独自性・独自的価値の形成:障害や病気を抱える自分にしか生きられない生き方に気づき、語り、伝えていく
L専門職主義・官僚制への異議申し立て
M効率優先・生産性優先の価値観への異議申し立て


U 社会変革機能

U−@ 社会制度の変革
 社会サービスの充実・拡大・創出
 ・口唇口蓋裂児:歯科矯正の治療を健康保険適用へ(1984)
         身体障害者手帳4級 取得へ(1985)
 ・難病特定疾患への医療費助成
 ・自立生活センターの財政支援
 ・福祉のまちづくり:当事者の政策策定会議への参画

U−A 価値観の変革
 企業戦士は立派、子育てをしない男性を父とはよばない
 文化の共有の核となる

V SHG(セルフヘルプグループ)運営上の留意点
 ・リーダーの共有
 ・アドヴォカシーの視点

☆ 中田知恵海先生より掲載許可を頂きました。


00/11/18